なぜ、条例が必要なのか。
平久保半島には、いま複数の大規模開発計画の話が届いています。私たちは開発そのものを否定していません。問題は、それぞれがばらばらの考え方で進んだとき、半島全体としての価値が失われることです。
数字で測れます。
夜空の暗さは実測で 21.89 mag/arcsec²。感覚ではなく計測値として、他と比較できる資産です。
全体が下がります。
光は敷地境界で止まりません。ひとつの施設の照明が、半島全体の測定値を押し下げます。個別の努力では守れない性質のものです。
基準がそろいません。
建築基準法にも景観法にも、夜の暗さを守る数値基準はありません。地域ごとに定めなければ、判断はその都度ばらつきます。
条例で、何が変わるのか。
条例案は全9章34条。要点は6つです。数値はすべて第4稿の条文に基づいています。
数値で守る
照明の色温度・向き・光源の種類・敷地境界の明るさに、明確な上限を置きます。「配慮する」ではなく、測れる基準にします。
下の「テカポ」は世界最大級のダークスカイ・リザーブ、アオラキ・マッケンジー地区計画(NZ・2023年確定)の値。「国内」は現在ある光害防止条例・星空保全条例の水準です。
国内:神津島 3,000K 以下。鳥取・美星は色温度の規定なし
国内:鳥取 2.5% 以下。美星は「水平以上に漏れない設計」
国内:国内の条例に規定は見当たりません
国内:国内の条例に規定は見当たりません
国内:美星は22時〜日の出の消灯を奨励(義務ではない)
国内:国内の条例に規定は見当たりません
国内:神津島 100cd/㎡。鳥取 400cd/㎡
国内:—
国内:美星は「前年度より明るくしない」という相対目標
この基準の位置づけ。国内の光害防止条例は、上方への光漏れと消灯時刻を中心に定めており、光源の種類・敷地境界の明るさ・天窓には踏み込んでいません。この条例案は、そこをテカポと同じ形で埋めています。逆に総光束量は、テカポに対応する規定がなく、国内にも例がありません。実測値(SQM)に基づいて見直す規定を条例に入れてあります(第8条3項)。
既存の照明には10年の経過措置があります(第9条)。灯台・航路標識、道路照明と集落の防犯灯、漁港の荷役や農作業の投光器、災害対応の照明には適用除外を設けています(第8条の3)。改修には市の技術的助言・財政的支援を想定しています。
確認する
石垣市風景計画で届出が必要な行為(自然風景域・農用地地区は規模を問わず、集落地区は高さ5m以上)に加えて、1,000㎡以上の建築・開発、宿泊施設の新増設、大規模照明の設置は、着手の30日前までに届け出。基準に合わない場合は30日以内に変更を求めます。建築確認の前に手続を終える仕組み(建築主事への通知制度)で、着工後の手戻りを防ぎます。市の届出に上乗せするもので、市の届出義務が免除されるわけではありません。
位置づける
平久保半島は既に石垣市風景計画(景観法第8条)の区域内。本条例はそこに上乗せする基準を定めます。建築物の高さ・形態・色彩、緑化・修景の基準を、集落部/自然区域/観光区域に分けて定めます。区域の指定と変更は、パブリックコメントと市議会の議決を経ます。
使い方を整える
特定自然利用区域の指定、認定ガイド制度、利用人数の上限、バギー等事業者の登録制。海岸では車両乗り入れ・路上駐車・マリンアクティビティのルールを定め、多言語で周知します。使わせないためではなく、使い方を決めるためです。
協働する
観光事業者は利用者にルールを周知します。協議会の認定事業者制度は条例の遵守を要件とし、市は認定事業者の遵守状況を踏まえた支援を行います。基準を守る事業者が有利になる設計です。
毎年公表する
届出件数、変更命令件数、SQM測定値の推移を毎年公表します。協議会は運用評価会議を毎年開き、住民・事業者・行政の意見を集約します。基準は作って終わりではなく、検証し続けます。
罰するための条例では、ありません。
この条例の中心にあるのは罰則ではなく、着手の前に確認する仕組みです。事後に取り締まるより、計画段階で논点を出し合うほうが、双方にとって損失が小さいからです。
禁止条項はありません。定めているのは、照明・高さ・色彩などの満たすべき基準と、その確認手続です。
持ちません。届出先は市であり、判断は市長が行います。協議会は測定と住民監視の体制づくりに協力する立場です。
なりません。既存照明には10年の経過措置があり、着手済みの事業には届出の規定は適用されません(附則2)。
条例で決めたいのは、
この地図に描いたことです。
抽象的な条文の前に、私たちが実際に困っていることを絵にしました。水上バイクの乗り入れ、砂浜へのバギー、夜通しの照明、置き去りのごみ、無許可のイベント。どれも「起きてから」では取り返しがつきません。
条例の各条文は、この一枚に描かれた困りごとに、ひとつずつ対応しています。インタープリテーション計画が「伝えたいこと」なら、こちらは「守ってほしいこと」です。
前例のない話ではありません。
同じ考え方の条例は、すでに各地で運用されています。私たちは、そこで実際に機能している仕組みを踏まえて条文を作りました。
観光地になったから規制したのではありません。
規制が先にあったから、資源が残りました。
ニュージーランド南島のマッケンジー地区が屋外照明のルールを地区計画に定めたのは1981年。当時そこは観光地ではありませんでした。ルールが先にあり、夜空の暗さが守られ、その31年後の2012年6月、同地区は世界で初めて最高位「ゴールド」の認定を受けた国際ダークスカイ・リザーブになります(面積4,367km²)。
(2017〜18年)
平久保半島は、まだその順番の入口にいます。大規模リゾートホテルが一軒もない今なら、基準を先に定めておけます。一度明るくなった夜空を暗く戻した例は、世界のどこにもありません。事業者にとっても、先に基準に沿って建てておけば、あとからの改修費用も、後年の規制対応も要らなくなります。
出典: Mackenzie District Plan(1981年の照明規定/Plan Change 22 – Light 決定 2023年4月4日)、Stuff.co.nz(訪問者数)、RNZ(人口)、New Space Economy 2024(星空体験の参加者数)。条例案 第3章は同地区計画を参照し、敷地境界の照度は農村区域と同値、新設設備の色温度はより厳しい値としています。
マッケンジーニュージーランド
条例を待たずに、
今から一緒にできます。
条例の制定には時間がかかります。その間も開発は進みます。だから私たちは、条例の基準を任意で先に実施する協定を用意しました。締結いただいた事業者は、認定事業者として位置づけ、協議会のサイトから予約導線までつなぎます。
今、どこまで来ているか。
条例はまだ制定されていません。私たちがどこまで進み、次に何をするのかを、そのまま公開します。
共同憲章を策定
五つの公民館が集まり、地域の理念を文書にしました。
認定事業者制度 開始
条例を待たず、地域の側で運用できる仕組みを先に始めました。
条例案 第4稿
総会で全会一致の承認。市役所との意見交換も継続しています。
市への提案・パブコメ・議会
制定に向けた手続きは、進捗をこのページで公開します。
第1稿から第4稿まで、どこをどう直したかを含めて公開します。とくに第2稿では市道の扱いを、第4稿では全体のフレームを「自然保護」から「地域価値の創造」に改めました。議論して直してきた文書であることを、そのまま見ていただきたいと考えています。
ご意見をお寄せください。
住民の方、事業者の方、半島の外の方。賛成でも反対でも構いません。条例は、意見が集まるほど強くなります。いただいたご意見は、毎月第1水曜の月例会で扱い、議事録として公開します。
